職場だけではなくもっと広い世界に意識を!

50歳パティシエです。 

私がこの業界に入ったのは30代後半のことですので人に比べるとかなり遅めの転職でした。
一般的には街のケーキ屋なりホテルなりで働き始めるのが20代前半まででしょうから随分と遠回りしたものです。
この職につくまでは営業職中心でしたから、ある程度頭には入れていたつもりですがそのギャップにかなり戸惑ったのを覚えています。
製菓の仕事に就いた時は私もケーキ屋でスタートしましたから、今のようなレストランでの仕事ではなく、朝早くからのラボラトリーでの仕事でした。
そんな経緯があって、同じ業界の人たちよりは比較対象にできる経験がある分、客観的に人を見ることが出来るような気がしています。

今一緒に仕事している若い世代に共通しているのは、やはり縦社会での身の置き方が頭に浮かびます。
先輩後輩の立場の違いがあまり意識されていないのか、ちょっとした気遣いができないのをよく目にしますね。
もちろんそういったことを段々覚えていくのが社会というものなのですが、新社会人になる人たちだけでなく、数年はキャリアがあるもうすぐ中堅クラスにもなろうという世代がそれを理解できていなくて指導できないのです。
特に今の職場は重症で、最近このお店に移ったばかりの私は本当に不安を感じることが多いのです。
例えば昼食などはランチタイムの後に一緒に休憩に入るのですが、もうすぐ休憩が終わるという時点で彼等はシェフや先輩が作業を始めようとしていても座ったまま、誰一人として席を先に立って食事の後片付けをしないのです。
食事を作ってくれた先輩スタッフに対してきちんとお礼を言うわけでもなく、まるでそれが当たり前のような素振りです。
私は基本的に食に関わる仕事に就いている者は食べることに感謝するのが当たり前だと思っていて、それぐらいの気持ちがないと客に対していいモノ作りができないのではと思ってしまうのです。

ケーキやデザートを主に作るパティシエの場合は特にですが、細かいところまで神経を使えるぐらいでないとなかなかいい仕事ができなかったりするのですね。
それは人に対しても同じことと思うのですが、若い世代はあまりそういう意識を持ち合わせていないようです。
もちろん全員ではないので、中には頑張ろうとしているのが伝わって来る熱意のある人もいるのですが、その分無神経なタイプは目立ってしまいますね。

あと気になるのは興味の範囲があまりに狭いこと、せっかく製菓学校を卒業してこの世界に入ってきたのに実はそんなに研究心もなくて、若くして好きなお菓子そうでないお菓子を決めつけてしまっていることが残念な気がします。
いろんなことを経験して自分なりのお菓子や料理を構築していくのがこの仕事のやりがいだったりすると思うのですが、彼らは休みの日も特に何をしたわけでなく、他の店の情報なんてさっぱり知らなかったりします。
他のお店でどんなものを作っているとか、どんな仕事のレベルなのかとか気にならないんでしょうか。
もっと言えばお店の中でどうなのかだけではなくて、一般水準がどのくらいで自分がどのレベルなのか気にして欲しいのです。
この仕事は欲を持てば持つだけ成長につながることが多く、逆に諦めてしまったらそこで止まってしまう職人の世界です。
一回できたからよしとするのではなく、一回の成功を二回目はさらに超えていくぐらいの貪欲さが欲しい世界なのです。

今一緒に働いている若い人たちはいつか他のお店に移ったり、中には独立する者も出てくるでしょう。
そんな時に恥ずかしい思いをして欲しくないのですね、少しばかり長く生きてきた先輩の希望としては。
私にはいろんな仕事で見てきた経験則があります。
経験してみないとわからないことばかりで、それはこれからも同じだと思うのです。
彼らは若いのですからもっと好奇心を持ってやってほしいと思いますね。